鬼束ちひろ
鬼束ちひろInterview
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*プロデューサー(以下P)、鬼束ちひろ(鬼)

P : よろしくお願いします。
鬼 : よろしくお願いします(笑)
P : じゃあ、早速『Sugar High』の全曲解説対談ということで、
自分たちで創って自分たちで解説するとは素晴らしい(笑)
まずは1曲目「NOT YOUR GOD」。
これは、アルバムの中でかなりプロローグ的な位置を占める・・・
鬼 : 1曲目(笑)。

P : これ、いつ創ったの?
鬼 : 17か18ぐらいかな。おばあちゃんちのピアノで作った。
P : そうね。僕としては「Call」とかと同じ匂いがするんだよ、
これね。英語の歌詞なんだけど、今回はそのままいこうと。
鬼 : そうですね。すごく変な話、下手な日本語より分かりやすいかも(笑)
P : “鬼束ちひろ”らしさというか、基本的にAとBの構成しかなくて。
淡々として、淡々と終わる。しかし良い声の響きだけが存在する。
鬼 : そうですね。
P : 羽毛田さんなんか、カレン・カーペンターみたいだと喜んでたけど。
鬼 : 実は私、それ気づいてたんですよ!
P : 何が?
鬼 : 自分の声がカレン・カーペンターに似てるって(笑)
P : (笑)カレン・カーペンターと声が似てるヤツって滅多にいない。
あの低音感はみんな真似したくても真似できない。
鬼 : そう、気づいてたんだけど。「さすが羽毛田さん!!」と思いましたね。
P : では今度「yesterday once more」でも歌ってもらいたいね(笑)
鬼 : 一番低いとこ、すごいイッテルから。
P : そうね。個人的にはね・・・「hero」の発音が好きですね(笑)。
あの発音は鬼束独特ですごいカッコイイと思うんだ。
非常に“鬼束English”とでもいうか。僕は好きですね。
鬼 : (笑)。あと・・・これは一言でいえば、“鬼束版白雪姫”なんです。
P : はあ?白雪姫?
鬼 : そう。「怖そう、でも世界は広がるんですけど・・・」
なんか「血まみれ白雪姫」みたいな(笑)
P : 血まみれね。まあそんな1曲目でしてね。
鬼 : よろしくお願いします(笑)

P : では2曲目、「声」。・・・創っちゃったな。こういうの。
鬼 : ねー・・・
P : 僕はびっくりしたね、メロディ聴いたときは。
あら?こういうの書けるのね・・・と。御自身的には?
鬼 : 天才かと思いました。
P : (笑)
鬼 : で、土屋さんにメール入れた。やばい、やばいって。
P : そう、「やばい」って件名のメールが来ましたね(笑)。
まあしかしこの楽曲は鬼束的オーケストラ・ポップスの中でも1つのケジメのような曲だと
感じます。 「声」というタイトルだけど「歌声」も良く録れてね。
羽毛田さんのストリングスアレンジも冴え渡ってます。圧巻!!
関係各位、特にオジサン系から大絶賛の逸曲。
鬼 : ふふっ。「Call」な感じ?
P : そうね。これは本人的には?
鬼 : これはですねぇ。聞いている人が寝なきゃいいかなと。
P : ああ、気持ち良すぎてね。
気持ち良すぎて寝るっていうことは、悪いことではないけどね
鬼 : そうですね。(笑)

P : うん。では3曲目。「Rebel Luck」“裏切り者Luck”ね。
鬼 : 違うよ。“裏切り者Luck”じゃない、これ“反逆者Luck”だよ。
P : ほとんど同じだろ、反逆と裏切りは。
鬼 : そうなの?
P : そうだよ。じゃあ“反逆者Luck”。
この曲は基本的に、“鬼束ちひろ”伝統的サウンド(笑)だと思うんだけど。
伝統って言ってもまだ3年も経ってないけどな。 非常に君らしい曲だと思う。
僕は個人的にアルバムの中でこの曲の歌声が最も良く録れたと思ってるんだ。
鬼 : 低いしね、めちゃくちゃ。
P : そう。温度感が低い、君の堪らない、中低音の魅力満載でね。
鬼 : そうですね。
P : この曲を演奏してくれたのは『インソムニア』の時のバンドなんだよね。
まだ大した年月は経ってないけど、原点回帰的な意味合いもある曲だね。
「Rebel Luck」、これ、本人はどうですか?
鬼 : あたし、すごいこの歌詞、好きなんですよ。
P : 特に君にしか書けない歌詞だと思うね。
鬼 : あの、「もう死のうかな」って思ってる人、これ聞いてください。
P : おいおい。まあわかるけど。「ああ、もう駄目だ」と。
鬼 : うん。「死のうかな」と思っている人がいいですね。
死ぬしかないんだって思ってる人は、死ぬ前に聞いて欲しい。
そしたら、ちょっともしかしたら「今日はやめとこうかな」っていう気になって・・・
P : 「一応、明日まで生きてみようか」と。
鬼 : そうそうそう。それ、すごい大事だから。自分もそういう感じで生きてるから。
それはすごい大事。
P : まあ、彼女は鬼束はずーっと淡々と同じようなことを歌ってる訳ですけど、
今まででいちばん彼女らしい表現だと思ってます。
まあ『This Armor』の「CROW」とかが好きな人は是非、
進化した形での鬼束のこういう音楽を聞いてほしいと思う。
はい、次4曲目、「Tiger in my Love」。これはついに念願かなって・・・

鬼 : 待たせましたねぇ(笑)
P : 初CD化。「インソムニア」の時ね、ちゃんと録音もしたんですがね。
まぁ、色々とありましてね。
まあほとんど僕のせいですけど(笑)これはね、ほんとに、
まずこういう曲を書いた君が偉いんだけど、ギターを入れなかった僕はもっと偉い(笑)
そして本当にピアノトリオで一発録りした羽毛田さんはメチャクチャ偉い(笑)
鬼 : (笑)
P : こういう曲はギターを入れたくなるんだけどね。みんな大人だから(笑)
これはファンのみんなから見れば意外性のある曲かもしれないけど、恐らく逆でね。
鬼 : そうそう。多分私に一番近いかも。
P : そうね。こういうアグレッシブな感性というのは、
“鬼束ちひろ”そのものみたいなとこがあってね。どう?この曲に対する想いなんかは?
鬼 : そうですね。私はこの曲のフェイクが好きですね。
すごい・・・感情的なの。そこが好き。
P : ラストのフェイクはメロディアスではないけれど、すごく想いがこもってる。
鬼 : うん。あのね、あたしはこの口喧嘩っぽいところが、すごい好きなの。
一方的にあたしがこう、どなってる、怒ってる、みたいなとこがあって。
なんか、感情の波がすごい出てるから好き。
P : まさに鬼束そのものだ(笑)しかしこれ息継ぎするスペースがないくらい
メロディが詰め込まれた曲なんだけどね。
鬼 : え、意外と楽なんですよ、(テンポ)つかめば。
P : 随分速くしたよ、これ。
鬼 : うん、でもすごい、思ったより全然楽。楽っていうか、自分のものにできて歌えた。
P : ところで、虎というのは君の中ではどういう動物なんですかね?
鬼 : うーん。“私”かな。
P : 自分自身?
鬼 : そう。あと、模様がすごい素敵だから好きなの。
P : そう言えばよくイラストとか描いてたな。
鬼 : そうそう。ちなみに私の…(笑)テーブルの下のマットは虎、です。(笑)
P : そう、みなさん、聞いてください。鬼束の部屋。
テーブルの下にアジの開きならぬ、虎の開きが置いてある(笑)ほんとに虎の形してるんだ。
鬼 : 本物じゃないんだけど、こう絨毯に虎の絵が描いてあって。
P : ああいうものをね、店で見つけて買う女(笑)
鬼 : フへへへ。
P : まあいずれにせよ、虎というのは鬼束の中のなにかある種の象徴的なね。
鬼 : ん、そうそう。私は虎だと思って。なんか強さの象徴みたいな動物だと思うし。
P : この歌詞も痺れるね。1行目なんか男は全滅する(笑)
鬼 : そうだね。
P : これ、いつ頃創ったんだっけ?
鬼 : えーっと2000年の夏・・・秋?。「月光」「Cage」の間くらいかな。
なんかつらい時にできた(笑)
P : まあ常に辛いんですけどね(笑)
まあ辛い方が良い音楽活動が出来るという可哀想な人生を送ってらっしゃいますから(笑)
P : では次。「Castle・imitation」。
これはある種今回の『Sugar High』の最も象徴的な音楽のアルバムバージョンだね。
この「Castle・imitation」は、元があってのアルバムバージョンなんでね。
これはどうですか?

鬼 : なんか、今回のこのアルバムバージョンは、
あたしにしたら秒針の音みたいなイメージなんですよ。
古い時計がこう…古時計じゃないよ、「大きな古時計」じゃないんだけど。
わたしの中で古い時計がこう秒針をね、
「でも秒針だけは刻むぞ」っていうみたいなイメージが。
P : 元のバージョンというのは本当にテンポもあって勇壮な感じもしてね。
でもバラーディッシュにするとメロディ感がより浮き出てくる。
「ああ、こういうメロディなんだ」という感覚が、
元のバージョン聴いた後にアルバムバージョン聴くともっと芽生える。
鬼 : うん。そうだね。両方聞いてほしいな。
P : 「Castle・imitation」自体に対する想いなぞいただけると。
鬼 : まず、歌詞がやっぱりすごい良い。理由なく良い!って感じがしてね。
まあ、毎回そんなこと言ってんですけど(笑)
それからやっぱりこの歌はどうしようもなく辛いときに、大泣きしながら聴いてほしい。
で、次の日、ちょっとこう、涙で目が腫れてるといいかなくらい。
P : ほうほう。地でいってますね、それをね(笑)
鬼 : そう!そういう曲だよね。

P : 次、6曲目。「漂流の羽根」。Aメロの歌い出しでゾクッとくるね。
この低音の表現はスゴイ。

鬼 : この歌はね、すごい、あたし賛否両論あると思うんです。
でも、あたしはね、もう…出来た時から、すごいこの曲のファンで。
自分で言うのもなんだけど。すごい、ファンなの。
P : うんうん、そうでしょうね。
鬼束さんは特に自分の気に入った曲ができた時は自己宣伝がすごい(笑)
「聴きたければいますぐ連絡ください」なんてメールが明け方に届く。脅迫に近い(笑)
鬼 : そう(苦笑)
P : 賛否両論も、まぁ君の基本だね。これはフルで聴いてほしい曲ですね。
鬼 : うん、そうそう。私はあの、この曲のあの間奏の、感じがすごい好き。
P : ピアノとチェロですね。
鬼 : チェロの感じがすごい好き。
P : このアルバムの中で最もシンプルな楽器構成です。
ピアノとチェロしかない。
鬼 : そう。あと、あたしの歌(笑)
P : そう、3つしか音が入ってない。
しかしそういうことを全く感じさせないドラマティックな展開だね。歌声もいい。
鬼 : そう?悲しくて眉毛が下がった感じがする、この歌。でも、ファンなの。

P : どんな感じだよ?まあそんな「漂流の羽根」です。
次、「砂の盾」。
これはなかなか良いメロディーと羽毛田東ヨーロッパサウンド(笑)
の絶妙なハーモニーですかな。
鬼 : そうですね。
これはアルバムの中で言うと、あたしの中では「Rebel Luck」と同じ位置にいるんですよ。
「Rebel Luck」が右だったら「砂の盾」は左、みたいな。白だったら黒、みたいな。
対をなしているところがね。あと曲としても。派手さもないしって感じなんだけど、
良い曲だと思う。
P : そうね。声質の良さとかよく出てる。
鬼 : 『Sugar High』のバランス?全体的な感じでいくと、
『Sugar High』な感じがすごいする。
良い意味で、こういうのが入っていることによって全体が、もっともっとくっきりする、
逆に言えば、“大事な位置に”みたいな。そういう意味でも、すごく好きな曲。
P : だからそういう意味では・・・
もちろん曲調は違うけど、ファーストの「螺旋」とかセカンドの「シャドウ」とかね。
鬼 : そうですね。
P : そういう調和的な位置の楽曲。さて次は「King of Solitude」。これは・・・

鬼 : うん。「声」の次にできたんだよね、これ(笑)。
P : 驚きましたね、この2曲は。特に「King of Solitude」は。
鬼 : うん、またもや天才かと思いましたよね(笑)
P : そう、今度こそ天才かと思った(笑)
鬼 : 思ったよね。(笑)
P : このメロディと歌詞はスゴイね。“孤独の王様”っていうタイトルだけど。
本当の意味で一人の人には染みる。
鬼 : あたしは行ったことはないんですけど。
ニューヨークのクリスマス間近の10時くらいの街をイメージして書いたんですよ。
親が子供と手をつないで帰ってるみたいな。
P : ほう。これは鬼束初の三拍子音楽。
三拍子と言うと黒人のゴスペルなんかを思い浮かべる人が多いと想うけど、
この楽曲には黒人音楽の色は全くない。
ニューヨークなんかの白人教会みたいな感じが近い。しかしこういう孤独な寂しさをだね、
暖かみのある歌詞でまとめあげるところなんか只者ではないね。
鬼 : うん(笑)
P : 幸せなことを暖かみで包容して歌ってるわけじゃないからね。
鬼束表現の振り幅の大きさです。 “アルバム名曲”みたいな感じで支持されて、
長く聴いてほしい曲だなと思う。
どう?「King of Solitude」は?
鬼 : 一番強いのは、この発売日にすごい合ってるっていうのが。大事じゃないようで、
すごい大事だと思うから、そういうのは。クリスマスソングで書いたわけじゃないのに、
何かそういう感じの曲ができちゃった。
P : まあクリスマスを一人で過ごす予定の人達は大至急聴くべきだね。
鬼 : 飛んで行かないけど、飛んでいくから。(笑)
P : そう。飛んで行かないけど、飛んでいくから。(笑)
鬼 : そうそうそうそう。そういう感じ。いや、なんか“孤独”っていうと、
すごいこうマイナスのイメージがあるけど、
わたしにとっては物凄いプラスで大事なものなので、すごく大事なの。
“孤独の王様”「King of Solitude」が、すごく良い風に働いている歌かな。

P : はい。では最後。「BORDERLINE」。これはラストにもってくるべき曲だよね。
鬼 : 土屋さんが勝手にもってきたんだから(笑)
P : おまえ賛成しただろ(笑)でもこれラストしかないよ。
鬼 : そうだね。終わり方とかもそうだね。
P : 「King of Solitude」で暖まった身体をもう一回・・・
鬼 : 冷やす(笑)
P : まあそうですな。でもまあこういう曲は日本にはない。
本編の方はほんとに鬼束らしい秀逸なポップスでね、
アウトロでは大変アグレッシブなストリングスとのフェイクの戦いもある。
鬼 : そうですね。あたしの中ではこれ一言でいうと、“マニアック・メジャー”なんですよ。
P : マニアックメジャー?
鬼 : そう。マニアックっていうと普通インディーズとかさアンダーグラウンドじゃないですか。
でも、そっちにいっちゃうと、駄目なんですよ。
“マニアック・メジャー”なの。そこがすごい大事。
P : なるほど。そういう意味ではきちんとポップスの体裁をなしているし。
鬼 : そうそう。さっきは「Tiger in my Love」でフェイクがすごい
感情っぽいって言ってたけど。
なんか曲全体が、吐息っていうか、こう…息遣いみたいな。そういうところが好きなの、
イメージ的に。
P : 確かにね。みなさんこの曲が終わった時の後味を抱いて2003年度を迎えましょう。
気が引き締まります(笑)
鬼 : ちなみにこの曲も、わたしはファンです(笑)
「漂流の羽根」と「BORDERLINE」がファンですね。
P : 自分で創って自分でファン。(苦笑)
まあそんな「Sugar High」です。みなさん是非ご愛聴の程。
今日はどうもありがとうございました。ではまた次作でお会いしましょう(笑)
鬼 : お会いしましょう(笑)
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